出典:温泉水99
こんにちは。看護師で、主婦で、ライターの筆者です。
先日ドン・キホーテをぶらぶらしていたら、異様な雰囲気の売り場を見つけました。
銀色ラベルのペットボトルがずらっと並んでいて、すごい圧迫感です。
正面に毛筆の書体でドーン!と「温泉水99」と印字されており、どうもミネラルウォーターらしいです。
淡い色合いでポップな印象の他の商品と並ぶと、ものすごく浮いていますね。
好奇心旺盛で、気になりだしたら止まらない筆者。さっそく詳しく調べてみました。
はじめに
温泉水99は鹿児島垂水温泉の地下750mから湧いているのだそうです。通販サイトでも広く販売していて、ふるさと納税の返礼品にもなっていますね。
健康にも美容にも良いと書かれていて、口コミもたくさん。有名人やお店でも愛用されているようです。品質維持にも気を配っており、商品としては良さそうです。
怪しいという口コミもありますが、しっかりした根拠のあるものではありませんでした。アムウェイとの繋がりも、うわさでしかないようです。でもホームページを丁寧に読んでいくと、首をひねるような怪しい説明がちらほら。
どこが怪しいと思ったか、その理由を1つずつ説明していきます。
温泉水99が怪しいと言われる理由
「世界最高品質のお水」ってなに?
公式ホームページによると、温泉水99は
”pH(ペーハー)9.9、硬度2以下という、世界最高品質のお水です。”
と紹介されています。pHは液体の性質を表す指標です。0~14まで分かれていて、真ん中の7が中性。それより数字が小さいと酸性、大きいとアルカリ性です。
それぞれの味としては、酸性のものはすっぱくて、アルカリのものは苦みやぬるつきを感じます。人が美味しいと感じる水はだいたいpH6~7.5だそうなので、温泉水99のpH9.9はだいぶアルカリ寄りですね。
そもそもの話ですが。水の品質が高いって、どういうことでしょうか。
筆者の考えでは、まず1番に安全であること、そして安定して手に入り、できれば美味しいことが大事です。
それに日本機能水学会の研究結果には「アルカリイオン水の規格は、pH9~10(適値は9.5)とされており、pH10超は飲用不可」とあります。
そうすると温泉水99のpHは、飲める上限ぎりぎり。それ以上のpHになると、器具の洗浄や掃除に使われるレベルになってしまいます。
浸かる温泉としてはpH10以上もありますし、けっきょく大切なのは使い分けなのでは?少なくとも、pHが高いほど高品質なのではありません。
「もともと人の体は健康な状態では弱アルカリ性で安定しています。しかし、生活習慣が乱れてくると酸性に傾いてしまいます。」とは?
人間の体だと、血液のpHの正常値は7.35~7.45です。弱アルカリ性の、とても狭い範囲で維持されています。
主に肺と腎臓でコントロールされていて、飲んだり食べたりしたものが直接影響することはありません。
病気が原因で、血液が酸性やアルカリ性になることはあります。これを医学的にはアシドーシス・アルカローシスといい、不整脈や体内の代謝効率の悪化を引き起こします。程度がひどいと、昏睡状態やけいれんになることもあるんですよ。
ところでみなさんは、コーラを飲んだことがありますよね。
そしてコーラを飲んで血液が酸性になり、不整脈や昏睡状態になった経験はありますか?ないですよね。
コーラのpHは2。けっこう強めの酸性ですが、体が調整してくれるおかげで血液は弱アルカリ性を保つことができるのです。
「硬度が低いほど、まろやかで飲みやすく、おいしく感じられます」って、ほんと?
温泉水99の硬度は2mg/L以下だそうです。公式ホームページには
”温泉水99は、超・軟水だから飲みやすい”
とあります。硬度とは何かというと、水の中に溶け込んでいるカルシウムとマグネシウムの量のこと。
WHO(世界保健機関)の基準では、
60~120mg/L未満を「中軟水」
120~180mg/L未満を「硬水」
180mg/L以上を「超硬水」
と分類しています。ヨーロッパ産のミネラルウォーターは、硬度が高いものが多いですよね。フランス産の超硬水、コントレックスを飲んだことはありますか?
のどに引っ掛かるような重たい飲み口で、筆者はペットボトル1本飲み切るのもかなり苦労しました。ミネラル分が多いので体質や飲む量によっては下痢をすることもありますし、薬を飲むとか赤ちゃんのミルクを作るのには向きません。
それに対して日本の水は軟水が多いです。軟水はミネラルに乏しい分、刺激が少なくてスルスル飲めます。
味覚の個人差は大きいですが、飲みやすいけれど味気ないという意見もありますね。そしてもちろん、ミネラル補給にはなりません。
日本では水道法という法律により、水道水の硬度が300mg/L以下と決まっています。とくに東京都水道局では、美味しさのために独自の規格を決めているそうです。
硬度10~100mg/Lと、法律より厳しい設定なんですよ。硬度は高すぎても低すぎても、良いとは言えません。
ミネラル補給をしたいから硬水、お腹が弱いから軟水など、目的と体質によって使い分けるのが良いと思います。
「カラダの奥まで潤う 抜群の浸透力」って、どういうこと?
公式ホームページには「水道水の1/2以下の細かな粒子で浸透力が高い」のが温泉水99の特徴だと書いています。
水の粒子ってなんでしょう?水分子のことを言っているのでしょうか。分子の大きさを変えることなど、誰にもできません。
粒子が小さいから浸透力が高い、とは何のことを言っているのか意味が分かりませんね。確かに、成分によって体への吸収のしやすさは違います。
例えば胃腸炎や脱水症の時の、水分とミネラルの補給はとても大切ですよね。
そういうときに役に立つのが、経口補水液。経口補水液には、糖分とナトリウムなどのミネラルが体液に近い濃さで入っています。そのため吸収されやすい、つまり浸透が良いのです。
では、温泉水99はどうでしょうか。
もちろん糖分は入っていませんし、「桁違いの超軟水」なのでナトリウムやその他のミネラルもとても少ないです。
つまり人の体液とは、かなり成分が違いますよね。これでは体内に吸収されやすいとは言えないと思います。
「サビない水」だから、どうなるの?
公式ホームページには、水道水と温泉水99に鉄のオブジェを入れて1日おいた様子を掲載しています。
水道水の方には赤くサビが浮いていて、確かに差があるように見えます。
調べてみたところ、アルカリイオン水に鉄を漬けておく実験はいくつも見つかりました。
アルカリイオン水にもいくつかタイプがあって、塩分を含まないアルカリイオン水ならサビ予防が出来ることも分かりました。
だからといって、アルカリイオン水を飲めば人体にもサビ予防効果があるのでしょうか?
アルカリイオン水の効果は古くから研究されていて、軽度の胃腸障害に対して効果があると認められています。
しかし、その数億円をかけた大規模な研究でも、抗酸化作用については分かっていないのです。
「天然アルカリ温泉水で、体の内側からキレイを!」って、効果あるの?
温泉水99はアルカリ性の温泉水。アルカリ性の温泉は日本各地に存在しています。
アルカリの持つ皮脂や角質を溶かす効果によって肌がすべすべと柔らかくなるので、美人の湯とか美肌の湯と呼ばれることが多いですね。
ですが、それはあくまでも温泉に浸かったときに得られる効果。温泉水を飲むことでも、同じ効果があるのでしょうか?
飲泉という、温泉水を飲む温泉療法があります。その温泉の成分に応じて、酸性泉ならアトピー性皮膚炎、含鉄泉なら鉄欠乏性貧血に対する効果があると認められています。
ではアルカリ性の温泉を飲むことで得られる効果はなんでしょうか?実は、ないんです。
また、公式ホームページには
”温泉水99はサルフェートやメタケイ酸などの保湿や潤いを保つ温泉成分を含んだ天然のアルカリ温泉水です。”
とも書かれています。サルフェートはデトックス効果、メタケイ酸は保湿効果があるとされている成分ですが、どちらもミネラル。温泉水99は硬度2mg/L以下の軟水ですよね。
ということはサルフェートもメタケイ酸も、ごくごく少量しか含まれていないはず。その量で効果が出るのでしょうか?
温泉水99は怪しい?まとめ
温泉水99は、販売開始から20年以上が経過しています。国民生活センターのホームページで健康被害の報告が無いか確かめましたが、ありませんでした。
これだけ時間が経っていても被害報告や注意喚起がなく、販売停止にもなっていません。ということは、温泉水99を飲んで問題なさそうです。
しかし、体質や飲むタイミングや量によっては、体に合わない可能性はあると感じました。
改めて説明するまでもなく、健康維持のためにも美容のためにも、水分補給はとても大切です。
ですが、色々な情報を集めた結果、水分補給をアルカリイオン水でやる必要はないと判断しました。お値段もそれなりにしますしね。
なので筆者は今まで通り、水道水を浄水器にかけて使いたいと思います。